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京都ツウのススメ

第百六十四回 文豪と京の味

作家が愛した京の名物京都は様々な小説の舞台になっています。 今回は、京都を愛し、京都を書いた作家たちが好んだ京の味をらくたびの若村亮さんがご紹介します。

基礎知識

其の一、

四季折々の景色が美しい京都は、多くの小説の舞台になっています

其の二、

作家の中には風光明媚な京都に魅力を感じ、拠点を構える人もいました

其の三、

作家の通ったお店には書などゆかりの品が残されていることもあります

四季折々の行事など小説のヒントが多い京都

春夏秋冬、四季により美しい風景が楽しめる京都。これらの風景や年中行事、独特のしきたりがみられる日常の暮らしなどは、多くの小説やエッセイに描かれてきました。古くは『源氏物語』や『枕草子』などが挙げられますが、近現代にも多くの作品があります。ノーベル文学賞を受賞した川端康成や、国内外で作品の芸術性が高く評価された谷崎潤一郎など、作家たちの中には一時的に京都に拠点を置いて作品を執筆した人もいました。

行きつけの店にはゆかりの品も

作家たちが親しんだ店の中には、彼らが書いた色紙や書などが残されていることがあります。店主からの依頼で書かれたことが多いようで、それに快く応じたことから店との良い関係性が感じられます。作家たちの作品の中で鋭い感性によって描かれた料理の数々はどれも魅力的。単なる食べ物ではなく、作家の思いを表現する“小道具”としての役割もあるのでしょう。今回は、文豪たちの愛した京の味をご紹介します。

伝統文化の中で使われる刃物

伝統文化の中で使われる刃物

作家たちの愛した食べ物は、
京都らしい味わいのものばかりです。

いもぼう

300年以上も一子相伝で伝えられるエビイモとボウダラの炊き合わせ。京都・下鴨神社近くの仮住まいで『古都』を執筆した川端康成をはじめ、吉川英治、松本清張などが通ったと言われ、店内には川端による「美味延年(びみえんねん)」の書があります。「おいしいものを食べて長生きできた」、あるいは「長生きしておいしいものを食べられて良かった」というふたつの意味があると言われます。

川端康成

写真提供:日本近代文学館

いもぼう

ここがツウ

『宮本武蔵』を書いた吉川英治は、いもぼうを食して「百年を伝えし味には百年の味あり」と褒めたそうです

鯖姿寿司

江戸時代創業の京寿司の老舗。海が遠く新鮮な魚介が手に入りにくかった京都の人にとって貴重だった鯖を使った姿寿司が名物です。一時、京都を拠点に執筆活動をした谷崎潤一郎も大変気に入っていたようで、孫・渡辺たをりさんのエッセイに「四条まで出るんだったら、いづうのお寿司を頼もうよ」とよく話していた、というエピソードが書かれています。

夏目漱石

写真提供:芦屋市谷崎潤一郎記念館

鯖姿寿司

川魚料理

東京生まれの夏目漱石は、生涯で4度京都を訪れたと言われています。そのうち2度の京都滞在中に訪れているのが洛北の料理旅館・山ばな平八茶屋。俳句にも親しんだ漱石は高浜虚子(きょし)とともに川魚料理を楽しみました。

池波正太郎

写真提供:県立神奈川近代文学館

川魚料理

※イメージ

ここがツウ

漱石は、高野川のほとりに立ち比叡山を望む山ばな平八茶屋のロケーションも気に入っていたようで「渓流、山、鯉の羹(あつもの)、鰻」と、当時の日記に食べたものとともに景観を書き留めています

ビーフカツサンド

食通で知られる池波正太郎が絶賛したのが、イノダコーヒのビーフカツサンド。エッセイではしっかりとしたボリュームから「男が食べるサンドイッチ」と紹介しています。分厚くジューシーなカツが挟まったサンドイッチに厚切りのベーコンが添えられているのがイノダ流です。

井上靖
ビーフカツサンド

ここがツウ

谷崎潤一郎もイノダコーヒの常連でした。創業当時の店内を復元した本店のメモリアル館には店の中庭を着物姿で歩く谷崎の写真が掛けられています

きつねうどん

学生時代を京都で過ごしていた井上靖。龍安寺の近くにある笑福亭に足繁く通っては、いつもきつねうどんを注文していました。作家となって世に知られるようになっても、関西を訪れるたびにお店に立ち寄っていたそう。店内には直筆の色紙などが置かれています。

水上勉

写真提供:井上靖記念館

きつねうどん

くずきり

祇園にある和菓子の老舗、鍵善良房の名物・くずきり。このくずきりを「京の味の王者」と言い表したのは、等持院などで修行した経歴のある水上勉。二日酔いの朝に食すことを好み、2杯目をおかわりして笑われたと書き記しています。

水上勉

写真提供:水谷内健次

くずきり
制作:2022年4月
バックナンバー
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第百八十六回 京都の地ソース
第百八十五回 『源氏物語』ゆかりの地
第百八十四回 京の煤払(すすはら)い
第百八十三回 京都の坪庭(つぼにわ)
第百八十二回 どこまで分かる?京ことば
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第百八十回 琵琶湖疏水と京都
第百七十九回 厄除けの祭礼とお菓子
第百七十八回 京都と徳川家
第百七十七回 京の有職文様(ゆうそくもんよう)
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第百四十六回 京の名所図会(めいしょずえ)
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第百四十二回 京の社寺と動物
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第百四十回 冬の食べ物
第百三十九回 能・狂言と京都
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第百三十一回 京の調味料
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第百二十九回 蹴鞠
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第百二十六回 京の仏像 [スペシャル版]
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第百二十四回 京の六地蔵めぐり
第百二十三回 京の七不思議<通り編>
第百二十二回 京都とフランス
第百二十一回 京の石仏
第百二十回 京の襖絵(ふすまえ)
第百十九回 生き物由来の地名
第百十八回 京都の路面電車
第百十七回 神様への願いを込めて奉納
第百十六回 京の歴食
第百十五回 曲水の宴
第百十四回 大政奉還(たいせいほうかん)
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第百十二回 京に伝わる恋物語
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第百九回 京の社寺と山
第百八回 春の京菓子
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第百六回 京の家紋
第百五回 京の門前菓子
第百四回 京の通り名
第百三回 御土居(おどい)
第百二回 文学に描かれた京都
第百一回 重陽(ちょうよう)の節句
第百回 夏の京野菜
第九十九回 若冲と近世日本画
第九十八回 京の鍾馗さん
第九十七回 言いまわし・ことわざ
第九十六回 京の仏師
第九十五回 鴨川
第九十四回 京の梅
第九十三回 ご朱印
第九十二回 京の冬の食習慣
第九十一回 京の庭園
第九十回 琳派(りんぱ)
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第八十七回 夏の京菓子
第八十六回 小野小町(おののこまち)と一族
第八十五回 新選組
第八十四回 京のお弁当
第八十三回 京都の湯
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第八十回 義士ゆかりの地・山科
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第七十八回 京の漫画
第七十七回 京の井戸
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第七十一回 香道
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第六十九回 平安京
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第六十七回 茶の湯(茶道)
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第六十一回 京の伝説
第六十回 京狩野派
第五十九回 京寿司
第五十八回 京のしきたり
第五十七回 百人一首
第五十六回 京の年末
第五十五回 いけばな
第五十四回 京の城
第五十三回 観月行事
第五十二回 京の塔
第五十一回 錦市場
第五十回 京の暖簾
第四十九回 大原女
第四十八回 京友禅
第四十七回 京のひな祭り
第四十六回 京料理
第四十五回 京の町家〈内観編〉
第四十四回 京の町家〈外観編〉
第四十三回 京都と映画
第四十二回 京の門
第四十一回 おばんざい
第四十回 京の焼きもの
第三十九回 京の七不思議
第三十八回 京の作庭家
第三十七回 室町文化
第三十六回 京都御所
第三十五回 京の通り
第三十四回 節分祭
第三十三回 京の七福神
第三十二回 京の狛犬
第三十一回 伏見の酒
第三十回 京ことば
第二十九回 京の文明開化
第二十八回 京の魔界
第二十七回 京の納涼床
第二十六回 夏越祓
第二十五回 葵祭
第二十四回 京の絵師
第二十三回 涅槃会
第二十二回 京のお漬物
第二十一回 京の幕末
第二十回 京の梵鐘
第十九回 京のお豆腐
第十八回 時代祭
第十七回 京の近代建築
第十六回 京のお盆行事
第十五回 京野菜
第十四回 京都の路地
第十三回 宇治茶
第十一回 京菓子の歴史
第十回 枯山水庭園の眺め方
第九回 京阪沿線 初詣ガイド
第八回 顔見世を楽しむ
第七回 特別拝観の楽しみ方
第六回 京都の着物
第五回 仏像の見方
第四回 送り火の神秘
第三回 祇園祭の楽しみ方
第二回 京の名水めぐり
第一回 池泉庭園の眺め方
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