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京都ツウのススメ

第百五十八回 陰陽師(おんみょうじ)

占いや呪術で平安京を守った陰陽師占いから呪術まで行った陰陽師や、平安時代の陰陽師・安倍晴明(あべのせいめい)についてらくたびの若村亮さんが解説します。

基礎知識

其の一、

国の役所に属し、占いなどを行ったのが陰陽師のはじまりです

其の二、

平安時代には、陰陽師が天皇や貴族に占いや祈祷(きとう)を行うこともありました

其の三、

安倍晴明は平安時代中期の天文博士で、陰陽師としても活躍しました

占いの専門家だった陰陽師

飛鳥時代から明治時代初期まで置かれた国の役所であった陰陽寮(おんみょうりょう)。設置当初は、天文観測を行う天文博士や、暦を作成する暦博士などの専門家が所属。その中で陰陽師は、占いや土地の相の判断などを行いました。平安時代に入ると、陰陽師は疫鬼を払うなどの祭祀も担当することが定められます。天文や暦、陰陽の知識に加え、呪術にも長けた陰陽師が登場し、賀茂忠行(かものただゆき)・保憲(やすのり)親子や忠行の弟子である安倍晴明が活躍しました。

数々の物話が残る陰陽師・安倍晴明

映画やマンガにもなった安倍晴明は、平安時代中期に実在した人物です。陰陽寮では長く天文を学び、52歳で現在の教授にあたる天文博士となり、後に陰陽師としても活躍。朱雀(すざく)天皇から一条天皇まで6代の天皇に仕え、病気の原因を占ったり、邪気を払うまじないを行いました。また、晴明には精霊である式神(しきがみ)を操ったり、天体の変異を見て天皇の退位を予知したという物話が伝わります。京都市内には晴明を祭神としてまつる晴明神社もあります。

平安時代の陰陽師

怨霊のたたりを恐れた人々は、陰陽師の力を頼りにしました。

内裏(だいり)のそばで占いや祈祷に従事

平安京では、天皇の住まいである内裏のそばに、宮中の事務を司 る中務省(なかつかさしょう)という役所があり、その中に陰陽寮が ありました。当時は、自然災害や疫病の背景には権力者同士の 争いなどに起因する怨霊のたたりがあると考えられ、占いを専門と する陰陽師に、災いを払う役割が求められるようになりました。

ここがツウ

かつて中務省が置かれた千本丸太町交差点近くの一帯 は、その名残から現在は「中務町」という地名になっています

陰陽師が行った占いや祈祷

六壬式占(りくじんしきせん)

式盤(しきばん)という道具を用いて、天皇の病気の原因、朝廷に動物が入り込んだ理由など、様々なことを占いました。

反閇(へんばい)

天皇が外出する際などに、呪文を唱えながら独特の足さばきで地面を踏みしめ、邪気を取り除きました。

泰山府君祭(たいざんふくんさい)

安倍晴明が始めたと言われる陰陽道を代表する祭り。病の回復や延命長寿など様々な祈願の際に執り行われました。

陰陽道関係の古文書群である若杉家文書には反閇の作法が記されています
『小反閇作法』 京の記憶アーカイブより

陰陽師が行った占いや祈祷

様々な知識と呪術を駆使する陰陽師が登場

賀茂忠行生没年不詳

安倍晴明の師。隠されたものを当てる射覆 (せきふ)が得意で、村上天皇の前でも披露。箱に隠されたものが水晶の玉であることを当てたと言います。

賀茂保憲917(延喜17)年〜977(貞元2)年

賀茂忠行の長男で安倍晴明の兄弟子と も言われます。陰陽寮の教えの中から、暦道を息子の光栄(みつよし)に、天文道を安倍晴明に継承しました。

安倍晴明921(延喜21)年〜1005(寛弘2)年

陰陽師としての活躍は60歳代半ばからと言われ、75歳で賀茂保憲の息子である賀茂光栄とともに、天皇直属の「蔵人所(くろうどどころ)陰陽師」に。85歳で亡くなるまで、天皇や貴族のために祈祷や占いなどを行いました。

ここがツウ

晴明の活動が記録されている文献のひとつが、国宝『御堂関白記(みどうかんぱくき)』。吉凶の判断の材料となる日付けや干支などが書かれた暦に、平安時代の公家・藤原道長が日々の出来事を書き込んだものです

安倍晴明(菊池容斎著)『前賢故実』 国立国会図書館蔵安倍晴明(菊池容斎著)
『前賢故実』 国立国会図書館蔵

物語の中の陰陽師・安倍晴明

『今昔物語集』『宇治拾遺物語』などには、安倍晴明にまつわる様々な物語が記されています。

草の葉で殺したカエル

晴明は式神という精霊を操ることができました。ある日、若い僧たちからその力を試すために「池のカエルを殺してみてほしい」と頼まれた晴明。やむなく草の葉をカエルに投げると、そのカエルはぺしゃんこになりました。晴明は式神の力を使いカエルを殺したのです。

ここがツウ

晴明は、妻が怖がることから式神を一条戻橋の下に封じ、必要な時だけ呼び出していました。晴明神社の境内には先代の一条戻橋の欄干の親柱が移されていて、そばには式神の石像があります

鬼を見つけ師を守った晴明

ある夜、賀茂忠行に伴いでかけた若き日の晴明が、下京の辺りで鬼たちが徘徊する様子を目にしました。驚いた晴明が牛車の中で寝入っていた忠行に伝えると、忠行は術法を用いて自分たちの身を隠し、無事に通り過ぎることができました。

百鬼夜行絵巻鬼や妖怪が深夜の町を徘徊する様子が
描かれた『百鬼夜行絵巻』
国立国会図書館蔵

天皇の出家を予知

わずか在位2年足らずで退位、出家を決めた花山天皇。出家する夜に晴明の屋敷の前を通りかかると、屋敷から「空に帝(花山天皇)が退位される兆候が出ている。宮中に知らせよう」という晴明の声を聞きました。晴明は天体の異変を見て、花山天皇の退位を予知していたのです。

コラム

晴明神社の社紋は
五芒星(ごぼうせい)

安倍晴明を祭神としてまつる晴明神社(上京区)では、「五芒星」「晴 明桔梗(ききょう)」と呼ばれる社紋を、井戸などに見ることができます。この形は、陰陽道に用いられる魔除けの祈祷呪符(符号)のひとつです。

晴明神社写真:晴明神社

制作:2021年9月
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