京都ツウのススメ

第七十七回 京の井戸

[京都の歴史と名水が生んだ井戸ものがたり] 京文化を育み、歴史や伝説が残る井戸について、らくたびの森明子さんが解説します。

京の井戸の基礎知識

其の一、
地下水に恵まれた京都は井戸が多く、生活用や商業用として使われてきました
其の二、
井戸や井戸水は、信仰の対象でもありました
其の三、
歴史や伝説を持つ井戸やその跡地は、今も名所として残されています

京都と井戸の関係

京都の地下には、びわ湖とほぼ同じ量の水があると言われています。地下水脈が浅く、井戸を掘ると簡単に多量の水が手に入ったため、洛西や洛南を中心に数百もの井戸があります。また1年を通して水温の変化が少なく良質な井戸水は、豆腐や生麩(ふ)作り、鮮魚の保存をはじめ京の食文化を支えてきました。また、宮中御用の染所の水として使われた由緒ある梨木神社の「染井(そめのい)」や、歴史上の人物とゆかりのある井戸なども数多く残っています。

井戸にまつわる言い伝え

井戸水とそれをくみ上げる井戸は、弥生時代から信仰の対象にもなり、水神がまつられるようになりました。また、井戸水のボウフラ対策に放たれたコイなどを水神とする地域もあります。神様がいる場所ということから井戸に向かって大声を出したり、刃物や金物を投げ込んだりすることは禁じられていました。お盆の前に井戸の大掃除である「井戸替え」を行うのは、死者が通る道を整える意味があり、井戸を埋める際は「息継ぎ竹」と呼ばれる竹を立て、フタをする風習が残ります。京都にはこのような言い伝えや伝説のある井戸が市内各所にあります。

[井戸の役割や逸話を知る] 京都に今も残る井戸の不思議な話や、歴史上の人物と関わりを持つ井戸を紹介します。

京文化と暮らしを支える井戸

京都の井戸水は、京料理や酒造りなどの発展に大きな役割を果たしました。錦天満宮の「錦の水」が湧く井戸は、かつて京の台所・錦市場を支えた地下水と同じ水脈で、今も水温18℃前後を保ち、飲料用として近隣の住人や料理人、観光客がくみに訪れます。また、京町家の台所には、流しと並んで内井戸が造られ、日常の生活用水として使われていました。

錦天満宮の井戸

伝説や逸話が残る井戸

冥界(めいかい)通いの井戸(六道珍皇寺)

あの世とこの世との境目とされる「六道」にある六道珍皇寺の井戸。小野妹子の子孫にあたり、平安時代の学者で役人だった小野篁(おののたかむら)は閻魔(えんま)大王に仕え、あの世へ行く際に入り口として使ったという伝説が残ります。特別公開時のみ見学可。

ココがツウ冥土から帰って来るのに使ったとされる「黄泉(よみ)がえりの井戸」が約140年ぶりに発見され、2012年に初公開されました

鉄輪(かなわ)の井

その昔、男に捨てられた恨みを晴らすために、この界隈に住んでいた女が頭に鉄輪を被り、貴船神社の御神木にわら人形を釘で打ち込み呪い殺す「丑(うし)の刻参り」をしたと伝わります。しかしその願いは叶わず、絶望してこの井戸に身を投げたそう。それ以来、縁切りの井戸として多くの人が訪れ、現在は井戸のみが残っています。

ココがツウ別れたい相手にこの井戸水を飲ませると縁が切れると信じられていて、昔は女性が望まない縁談を破談にしたい時に、この水をくみに訪れたと言われています

歴史上の人物とゆかりの深い井戸

安倍晴明×晴明井(晴明神社)

平安時代の陰陽師(おんみょうじ)で、六代の天皇の側近を務めた安倍晴明をまつる晴明神社。晴明に祈ると不思議な霊の力を受けることができ、災いや病気から身を守ると言われ、魔除け信仰を集めてきました。晴明の念力によって湧き出たという井戸水は、病気平癒に効果があるとされます。

ココがツウ毎年、立春に五芒星(ごぼうせい)をかたどった井戸の上部を回転させて、取水口がその年の恵方に向くようにしています

豊臣秀吉×太閤井戸(北野天満宮)

1587(天正15)年、豊臣秀吉の政庁兼邸宅である聚楽第(じゅらくだい)完成に伴い、北野天満宮で催された北野大茶会でこの井戸水が使われました。

小野小町×化粧井戸(隨心院)

小野小町邸宅跡と伝わる隨心院にある井戸。石組みで囲まれた深い井戸には、今も水が湧き出ており、小町がここで朝夕化粧をしたと伝わります。

京の井戸MAP
制作:2014年8月
バックナンバー
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第百十一回 鵜飼(うかい)
第百十回 扇子(せんす)
第百九回 京の社寺と山
第百八回 春の京菓子
第百七回 幻の京都
第百六回 京の家紋
第百五回 京の門前菓子
第百四回 京の通り名
第百三回 御土居(おどい)
第百二回 文学に描かれた京都
第百一回 重陽(ちょうよう)の節句
第百回 夏の京野菜
第九十九回 若冲と近世日本画
第九十八回 京の鍾馗さん
第九十七回 言いまわし・ことわざ
第九十六回 京の仏師
第九十五回 鴨川
第九十四回 京の梅
第九十三回 ご朱印
第九十二回 京の冬の食習慣
第九十一回 京の庭園
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第八十七回 夏の京菓子
第八十六回 小野小町(おののこまち)と一族
第八十五回 新選組
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第八十三回 京都の湯
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第七十八回 京の漫画
第七十七回 京の井戸
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第五十一回 錦市場
第五十回 京の暖簾
第四十九回 大原女
第四十八回 京友禅
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第四十六回 京料理
第四十五回 京の町家〈内観編〉
第四十四回 京の町家〈外観編〉
第四十三回 京都と映画
第四十二回 京の門
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第三十八回 京の作庭家
第三十七回 室町文化
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第三十四回 節分祭
第三十三回 京の七福神
第三十二回 京の狛犬
第三十一回 伏見の酒
第三十回 京ことば
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第二十六回 夏越祓
第二十五回 葵祭
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第二十回 京の梵鐘
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第十八回 時代祭
第十七回 京の近代建築
第十六回 京のお盆行事
第十五回 京野菜
第十四回 京都の路地
第十三回 宇治茶
第十一回 京菓子の歴史
第十回 枯山水庭園の眺め方
第九回 京阪沿線 初詣ガイド
第八回 顔見世を楽しむ
第七回 特別拝観の楽しみ方
第六回 京都の着物
第五回 仏像の見方
第四回 送り火の神秘
第三回 祇園祭の楽しみ方
第二回 京の名水めぐり
第一回 池泉庭園の眺め方
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