京都ツウのススメ

第五十五回 いけばな

[京都で生まれた日本の伝統 いけばな]日本文化を語る上で外すことができない、いけばな。その起源や鑑賞の基礎を、らくたびの佐藤理菜子さんが解説します。

京のお豆腐の基礎知識

其の一、
仏様に花を供える「供花(くげ)」という習慣がルーツです
其の二、
「華道」としてのいけばなは、室町時代に京都のお寺で生まれました
其の三、
今では全国に広がり、流派は数百あると言われます

いけばなのルーツは仏教

飛鳥時代、日本に仏教が伝わり、仏前に花を供える習慣が生まれました。この「供花」がいけばなのルーツだと言われますが、現在のように床の間に花を飾るようになるのは、床の間のある書院造が発達した室町時代になってからのこと。武家の間で、中国の絵画や工芸などの美術品を楽しむことが流行し、室内の飾りが発展しました。足利家に仕えた座敷飾りの専門家が残した教本によると、床の間の飾りは花瓶・香炉・燭台の3点が基本です。これらはすべて仏教の道具であり、やはり仏教の影響がみられます。

ココがツウ平安時代の『枕草子』にも瓶(かめ)に挿した桜を愛でるシーンがありますが、部屋の外に飾った花を室内から鑑賞するという形でした。また、貴族の間では栽培した花の優劣を競う遊びもあったそうです

華道発祥の地、京都

室町時代、東福寺の僧・雲泉太極(うんぜん たいぎょく)の日記『碧山日録(へきざんにちろく)』に、池坊専慶(いけのぼう せんけい)という花の名手が登場します。池坊は六角堂の住職として飛鳥時代から仏様に花を供えていましたが、専慶のいけた花が評判を呼び一躍有名に。花をいける心構えを本にまとめ、華道の基礎を作ったのが専慶の後に登場する池坊専応(せんのう)です。安土桃山時代に活躍した池坊専好(せんこう)は、豊臣秀吉に引き立てられて注目を浴びました。さらに江戸時代には、天皇が催す花会の指導者として招かれる機会も多くなり、その後、弟子も増え華道は全国へ広がっていったのです。

ココがツウ代々の六角堂住職は、寺の池のほとりにある建物に住んでいたことから「池坊」と呼ばれるようになりました

いけばなの基本

現在、華道の流派は全国に数百あると言われていますが、多くの流派に共通した理念があります。例えば、いけばなの花形の一種である生花(しょうか)は、骨組みとなる「真(しん)・副(そえ)・体(たい)」と呼ばれる3つの枝で構成されています。呼び方は流派によって異なりますが、この3つの枝を中心に美しい形を表現するという点は同じです。

ココがツウ

いけばなは、花や枝を切り落としながら調和させる「引きの美学」が特徴。対して、西洋のフラワーアレンジメントは、花で空間を埋めながら作品を作ります

いけばなの主な形

550年の歴史の中で、いけばなにも様々な形が生まれました。時代ごとの住宅事情が背景にあるようです。

立花

仏様に供えた花に由来する、最も古典的ないけ方で、江戸時代に大成した大型で豪華な形。「花をたてまつる」という意味があり、仏教の聖地・須弥山(しゅみせん)を表しています。

《特徴》大自然の景観美を表現したもので、9つの役枝を基に構成されます。仏様を迎える役割の枝があるなど、仏教の影響が色濃くみられます。

室町時代~現代のいけばなの写真
生花

立花に比べると小ぶりな生花は、いけるのも床の間に飾るのも簡易なことから、数寄屋造が流行した江戸時代以降、庶民に広く好まれました。千利休など、茶人が茶室にいけた簡素な「いけはな」が元になっています。

《特徴》野や山、崖などの、自然に花が咲いている環境を想像しながらいける心掛けが大切です。

江戸時代~現代のいけばなの写真
自由花

伝統的な形式にとらわれない自由な発想でいけられます。昭和に入り、洋風住宅が増加したことや、流通の進化などによって様々な西洋の花が出回るようになり普及しました。

《特徴》素材にひらめきを得て生まれる創作いけばな。花そのものの色や質感にこだわることもあれば、自分の気持ちを表現する手段としていける場合もあります。

現代のいけばなの写真
京都の主な華道流派

池坊専慶の弟子たちは、京都をはじめ全国で活躍していけばなを広めました。池坊以外にも、現在京都に本部を置く流派には、お寺や皇室と深いつながりを持つところが多くあります。

池坊 池坊専慶を中興の祖とする日本最古の流派。六角堂の仏様に花を供えていたことが始まりですが、やがて天皇が御所で催す花会の指導も行いました。
都未生流 1835(天保6)年に藤木月亭光信が創流。流祖は、知恩院の門跡である法親王(ほっしんのう)の華道師範を務めました。
御室流 仁和寺に伝わる流派で、寺を創建した宇多天皇を流祖とします。寺院華道として花を通して人格の形成と、感性の涵養(かんよう=水が自然にしみこむように、少しずつ養い育てること)に力を注いでいます。
桑原専慶流 元禄年間(1688~1704年)に、立花の名手として京都で活躍した桑原冨春軒仙溪(くわはらふしゅんけんせんけい)が創始しました。
嵯峨御流 嵯峨天皇の離宮・嵯峨院が前身の大覚寺に伝わるいけばなが元になっています。大覚寺には、花をいけることに従事する嵯峨御流華道総司所が存在します。
美しいいけばな作品が披露される 池坊550年祭 いけばなの夜明け フィナーレ花展 旧七夕会 池坊全国華道展

髙島屋京都店

  • 11/14(水)~19(月)
  • 祇園四条駅下車 西へ徒歩約5分

池坊会館・六角堂ほか

  • 11/16(金)~19(月)
  • 三条駅下車 南西へ徒歩約20分/地下鉄烏丸御池駅下車
    南東へ徒歩約5分

時間・料金などについてはお問い合わせください

  • 075-231-4922(池坊華道会)

※用語・写真は池坊のものです

制作:2012年10月
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