第37回 京阪・文化フォーラム

馬と人間の歴史

古くから馬は、農耕や輸送、軍用馬として人間の営みと密接な関係にありました。本フォーラムでは遥か紀元前、ユーラシアの草原地帯で発生した馬と騎馬文化の源流を探り、シルクロードを通じた東西世界への文化的伝播を紹介します。

日時
平成27年11月11日(水)・12日(木)13時〜15時30分
会場
JRA京都競馬場 シグネットホール

JRA京都競馬場開設90周年記念

プログラム

[今回の特別企画説明] 「JRA京都競馬場90周年について」
JRA京都競馬場 副場長
後藤 浩之(ごとう ひろゆき)

公益財団法人 馬事文化財団理事 馬の博物館副館長 末崎 真澄

[講演] 「馬のシルクロード」「日本人と馬」
公益財団法人 馬事文化財団理事 馬の博物館副館長
末崎 真澄(すえざき ますみ)

レポート

秋と言えば「食欲の秋」「芸術の秋」など様々な秋がありますが、「天高く馬肥ゆる秋」とも言うように、馬が大きく成長するこの季節、各馬が実力を競い合う菊花賞、エリザベス女王杯などのG1レースが連続する秋は、まさに「競馬の秋」と言えるかもしれません。

会場外
会場中

さて、第37回目となる京阪・文化フォーラムは、淀駅に直結する京都競馬場が会場です。今年は京都競馬場が淀の地に開設されて90周年の節目にあたり、その記念事業の一環として開催されました。

講師には馬事文化財団理事であり、馬の博物館副館長の末崎真澄先生をお迎えし、「馬と人間の歴史」についてご講演いただきました。

講演の前には京都競馬場副場長の後藤浩之さんからごあいさつがあり、84万平方メートルに及ぶ京都競馬場の概要やコースの特徴について、また1908(明治41)年の島原競馬場に始まる京都における競馬の歴史などについてお話がありました。

開催当日は気持ちの良い秋晴れとなり、競馬ファンの方から今回初めて競馬場に訪れたという方まで大変多くの方々にご参加いただきました。

■第1部:講演「馬のシルクロード」

第1部の様子
第1部の様子

第1部は「馬のシルクロード」と題し、人が馬の背に乗り、様々な用途で畜力利用を始めた騎馬文化の起こりと、古代オリエントからギリシア・ローマ、中央・東アジアへと伝わった馬利用の例や、シルクロードを通じた馬事文化の伝播などを様々な図版とともにご紹介いただきました。

まず馬の身体的特徴として、持久力に優れる大きな内臓を持つこと、硬い背骨と人がじかに乗れるブリッジ型の骨格、長い距離を一定の速さで走ることができるスピードなどが挙げられます。騎乗用の動物として体格的に優れた馬は、およそ紀元前3500年頃に中央ユーラシア草原地帯の牧畜民により家畜化され、縦横に駆け回る馬を乗りこなすためハミ(馬銜)や鞍といった馬具が発明されました。これにより、農耕や交通、輸送、娯楽、軍用馬など様々な分野で役畜としての利用が始まり、その後長きにわたる馬と人間とのパートナーシップが築かれていきました。

講演の後半は、エジプト・メソポタミア・ギリシャ・ローマなどの考古美術に描かれた馬の姿から、家畜化以降の馬と人との関わりについて読み解いていきました。

例えばメソポタミアから東アジアまでの古代の馬利用では、車行の始まりとともに馬車や戦車を引く馬の姿がレリーフなどに残されています。紀元前7世紀に登場した騎馬遊牧民族スキタイはシルクロードを自由に行き来し、巧みな騎乗技術だけでなく武器や馬具、服装など最新の騎馬文化を東西世界に伝えました。この他、古代ギリシアの芸術や神話の中に描かれた馬や、古代ローマの戦車競走、中国の彫塑(馬俑)などが紹介され、諸文明の中で馬が果たした役割や意義について様々な角度から知ることができました。

■第2部:講演「日本人と馬」

第2部の様子
第2部の様子

第2部は「日本人と馬」をテーマに、日本馬の実像と和式馬具について、また中世から戦国時代に至る騎馬の戦いや日露戦争時の日本騎兵などについて、その実像を探りました。

日本に乗馬の風習と馬具が伝わったのは4世紀末から5世紀初頭頃と推測されています。シルクロードが開通した奈良・平安時代以降には、日本の気候風土に合った実用的な和式馬具が作られましたが、武士の台頭とともに、螺鈿(らでん/貝の内側の光沢を切り出したもの)や蒔絵を施した鞍や足を乗せる鐙(あぶみ)が日本独特の馬具として発達しました。

さて、日本の歴史上、源平合戦に始まる中世の戦いは馬と武士が最も輝いた騎馬戦の時代でした。ここからは、様々な合戦絵巻や屏風絵を参照しながら戦場における名馬の実像が紹介されました。

馬の能力が遺憾なく発揮された戦いの例として、源平合戦の中でも特に有名な「一之谷合戦」の「鵯(ひよどり)越え」が挙げられます。江戸時代に描かれた「一之谷合戦図屏風」には源義経率いる騎馬集団が崖を下り、一之谷に布陣する平氏に奇襲攻撃を仕掛ける様子が描かれていますが、急斜面では馬が転げ落ちてしまうため、馬から降りて引きずりながら坂を下ったのが実際のところのようです。

戦国時代に入ると鉄砲が伝来し戦場の主力兵器となります。織田・徳川連合軍による鉄砲隊と武田騎馬隊が激突した長篠の戦いでは、約1000挺もの鉄砲の前に戦国一を誇った武田騎馬隊は壊滅的打撃を受け、以降、日本の戦争の中で騎馬による戦いはなくなっていきました。

明治維新の後、急速に近代化した日本は外国との戦争の時代に突入します。1904(明治37)年に勃発した日露戦争では、司馬遼太郎の小説『坂の上の雲』でもよく知られるように、“日本騎兵の父”と呼ばれる秋山好古が世界最強のコサック騎兵を破り、日本軍を勝利へと導きます。この小説のドラマ化にあたり、末崎先生は明治の騎兵の監修をされたそうですが、一斉射撃のシーンでは銃声で馬が暴れないよう必死で抑えていたことなど、ドラマ撮影時のエピソードも数々お話いただきました。

現在、日本の在来馬は1800頭ほどで、北海道和種、木曽馬、野間馬など8品種が生息しています。モータリゼーションの普及により身近な生活から姿を消した馬ですが、神社での流鏑馬(やぶさめ)神事や絵馬などに用いられ、またエルメスやグッチなどのカバンやスカーフなどに見られる馬や馬具のデザインなどを通して、今日に伝わる馬の文化を感じ取ることができます。何千年もの時を経て積み重ねられた馬と人間の歴史は、今なお人々の暮らしや風土の中に確かな形で受け継がれているのです。

京阪・文化フォーラムは、今後も様々なテーマで開催いたします。みなさまのご参加をお待ちしております。

バックナンバー
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第42回 花と建築 建築と華
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真田幸村の足跡を辿る —九度山から大坂の陣まで—
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真田丸の戦略と真田信繁(幸村)の実像に迫る!
第37回 馬と人間の歴史
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