京阪・文化フォーラム

第34回 彩られた京都の古社寺

桃山文化を色濃く伝える伏見にて、「彩られた京都の古社寺」テーマに、文化財や祭礼、行事などを通じ「日本の色」を追求します。

御香宮神社 本殿

日時
平成26年3月8日(土)13時〜16時10分
会場
御香宮神社 参集館(京阪・伏見桃山駅 徒歩約5分)

プログラム

染色家 吉岡 幸雄

[講演] 「伏見 我が町 今昔(こんじゃく)」
染色家
吉岡 幸雄(よしおか さちお)

御香宮神社 宮司 三木 善則

[トークセッション]
御香宮神社 宮司
三木 善則(そうぎ よしのり)

染色家 吉岡 幸雄

染色家
吉岡 幸雄

川面美術研究所 代表家 荒木 かおり

川面美術研究所 代表
荒木 かおり(あらき かおり)

伏見の銘酒 振る舞い酒

[振る舞い酒] 「伏見の銘酒 振る舞い酒」

御香宮神社 社殿見学

[見学] 「御香宮神社 社殿見学」

レポート

会場外
会場中

 

今回の文化フォーラムの会場となったのは、1605(慶長10)年、徳川家康の命によって建立された御香宮神社。境内地から日本の名水百選に選定されている「御香水」が湧き出ていることでも知られています。

 

テーマは「彩られた京都の色彩」です。「色」の専門家が集まり、社寺や京都の街並みを彩る色彩についてさまざまな考察が行われました。

 

当日は多くの方が参加され、第1部講演、第2部トークセッションの後、社殿を拝観しました。

■講演

講演の様子
会場風景

第1部は、植物染め(草木染め)の染屋「染司よしおか」の五代目当主として活躍する吉岡幸雄さんの講演です。染師のかたわら染色家としても活躍される吉岡さんは“伏見生まれ伏見育ち”。幼少期から慣れ親しんだ郷土の思い出を語りながら、歴史的資料に描かれた伏見の風景や街並みについて説明されました。

文献によると江戸時代前期の伏見は、雄大な山々がそびえ、その上空に雲がたなびき、そして無数の鳥たちが飛び交う美しい光景だったそうです。その後、伏見城が解体されると町は荒れてしまいますが、そこに徳川幕府が桃の木を植えて再興していきました。

江戸後期に描かれた当時のガイドブックとも言える「都名所図会」。そこで気づかされるのが川沿いの風景です。必ずと言って良いほど柳の木が出てきます。地に深く根を張る柳の性質を利用し土手の保護に役立てた災害対策であるとともに、川岸を豊かに彩るため、当時の人々が工夫を凝らしたことが分かります。他にも柴木を積んで運ぶ柴舟や、京都と大阪を結んだ三十石船など、文明の進化とともに見られなくなった懐かしい風景があったそうです。吉岡さんは当時の情景が頭に浮かぶように語られていました。

現在の日本文化は「わび」「さび」に代表されるようなモノトーンの色合いが主流になっています。しかし、室町時代の「洛中洛外図屏風」に描かれているように、南禅寺の赤い山門をはじめ、昔の神社・仏閣などの建物は彩り豊かに並んでいます。人々の服装も華やかな色合いだったそうです。国内外から多くの人々が訪れる観光地・京都は美しい街並みが続きますが、古き良き時代にあるような華やかさも必要だと改めて感じさせられました。

■トークセッション

トークセッションの様子A
トークセッションの様子B
トークセッションの様子C

第2部は、司会者である御香宮神社・三木善則宮司を中心に、川面(かわも)美術研究所代表を務める荒木かおりさん、吉岡幸雄さんの3名によるトークセッションです。

まず、1990(平成2)年に約390年ぶりに行われた御香宮神社本殿の修理、1997(平成9)年6月に行われた拝殿の半解体修理について三木宮司から説明があり、続いて実際に作業を請け負った荒木さんがプロジェクターで当時の写真を紹介しながら解説されました。

この修理は、時の経過とともに色が落ちた本殿の板絵、杉戸絵、構造材、及び拝殿の正面破風(はふ)装飾や各面の虹梁(こうりょう)、組物、蟇股(かえるまた)などの彩色を復元するというもの。建立時、木の柱の彩色は墨や顔料を何層にも塗り重ねていました。その後、風雨の影響によって顔料がはがれ木が痩せ、墨で描いた下絵部分のみが残って木の表面に凹凸ができた状態になってしまいました。作業はこの凹凸部分を斜光ライトで照ら出し、それによって当時の色彩を識別し再度塗り直すのです。それまで、斜光ライトを用いた文化財の修理作業には前例がありませんでしたが、この御香宮神社の修理成功をきっかけに広く使われるようになったそうです。

彩色の修復には、主に顔料と呼ばれる岩を砕いて粉末状にした絵の具を使います。色によって岩を変えますが、同じ岩であっても粒子の大きさによって濃淡が異なったり、酸化させると色に渋みがでたりとさまざまなバリエーションを出すことができます。これらの色彩を組み合わせて復元するのですが、肝心のはがれ落ちた凹凸部分を判別する遮光ライトは周囲が暗くならないと正確に照らし出すことができず、そのため深夜にまで作業が及ぶことが多々あったそうです。苦労を重ね約7年もの歳月をかけた甲斐もあり、今は鮮やかな彩を帯びて桃山文化の装飾美が見事に復活しています。

また、普段用いる色の原料について話が及ぶと、荒木さんは顔料、吉岡さんは染料というそれぞれ違った立場から意見を交わす一幕も。それぞれ原料収集の苦労に触れた上で、現在徐々に進行しつつある染料から顔料を作る技術が開発されれば、今後さらに色のバリエーションが増え表現の可能性が増すとも。さらに、彩色の選別に関しては両者とも自身の感性を重んじることが大事だと意見が一致。吉岡さんが、目視重視で行う“直感型”だと自身を称すると、荒木さんも科学的根拠は裏づけに過ぎず、あくまで自分自身の感性によって色を紡ぎだすことが重要だと賛同されていました。

■振る舞い酒・社殿見学

振る舞い酒
社殿見学

社殿見学に向かう前に参道の脇にある会場の出口で地元伏見のお酒が振る舞われ、その豊かな味わいに舌鼓を打ちました。なかには「おかわり!」という方も。ほのかな良い香りとともに周囲は和やかな空気に包まれました。

続いて極彩色に彩られた拝殿と本殿を見学。参加の方々は、先ほどの講演、トークセッションでの話を思い起こしながら、伏見の町に息づく御香宮神社の雅な佇まい、本殿と社殿の色合いを興味深く、約400年の時を経て復元した色彩の妙味をじっくりと堪能されていました。

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